2009UJ08月号SBR感想 『#49 デラウェア河にて(3)』

| 2009.10.21 (Wed) 2:02 AM | [SBR感想] | ←前■TOP■次→ |
進行する不可解なクライマックス


隣人は死を伴って、やって来る――。

 

前号まで
大統領の野望を阻止するには、聖なる「遺体」の最後の部位を体内に宿したルーシー・スティールを救出するしかない状況下。いち早く大統領の列車に迫ったDioとホット・パンツだったが、目前にもう一組に自分たちが現れ…!?







今月号のトビラ絵は間違い探し。パラレルワールドを示唆しているのだと思いますが、但し書きにある通り、どちらか一方が正しいもので片方が異なる世界である、という表現がなされていません。具体的に言うと、ジャイロの服の装飾は右の絵が正しい。だけど、ジョニィの額のエンブレムは左の絵が正しい、という感じ。本編を読んでいる読者から見るとどちらも「正しい世界ではない」と言えますが、読者が認識している世界ですら「正しい世界」という保証はどこにもないわけです。(ちなみに、ジョニィの顔のキズは「ある」のが正しいようです。大統領に撃たれた時の傷みたい。ソンビ馬の糸で縫ったんですかね)

正しい世界、基準となる世界は何なのか。それはD4Cのように世界の理の外に身を置くか、確実に認識できるもの、つまりは自分を基準にするしかないのかもしれません。どちらにしても、人は認識できる範囲でしか判断できないって事なんだと思います。宇宙の果てとやらも、時空をベースにした“観測できる宇宙”の果てであるわけだし。

そんなふうに考えたときにふと思うのは、認識できる世界が違うとき、価値観や正義も違ってくるんだろうなぁという事です。だから善悪の概念なんて、すぐにひっくり返ってしまうのではないかと。大統領には何が見えているのか。オレが気になるのは、そこだぜ……!


んなことを思いつつ、個人には限界があるので自分の中の小宇宙でその基準をしっかり持つことが重要なんではないかと、ジョジョっつう作品を読んでいて思うわけですよ。




脱線しまくりましたが本編です。

冒頭は産気づいて今にも陣痛が始まりそうなルーシーから。傍らには瀕死のスティール。もしスティールが仮にここで目が覚めたとしたなら、そばに孕んで産気づいてる幼な妻がいるわけです。生きてた妻にびっくりしたと思ったら、マタニティ・ルーシーですよ。どっちにしても大ショック。死んじゃう!

そんな事は措いときまして、いまルーシーの身体では「遺体」の頭部が受肉し顕現しようとしてるわけなので、不思議な現象がバンバン発生してます。コップの水は出エジプトの如く割れ、それはさながら奇跡ですが、おなかに浮かんだドクロの影に手をかざすと手が粉みじんになって吹き飛ぶという怪奇現象も勃発。ホント、奇跡と怪異は紙一重。


指までフッ飛ぶこの現象


吹き飛んだ手の下には別の「手」が出現しており、その変異は触れた部位から体中に伝播します。なにこれズルリンズルリンとか言ってて超キモイ。遺体の受肉とは、そのままルーシーの身体をベースに顕現するってことなのか。このテの「変異」はジョジョ5部でもレクイエムであったし、楳図先生なんかもよく描いているけど、自分の体が入れ替わっていくってどんな感じだろう。とりあえず、名状しがたい恐怖だけは理解できます。
これは、世界が自分を基準にしたものであるなら、その変異も自分から起こるという事なのかもしれません。世界の変質=自分の変質。そんなかんじ?


一方、列車の大統領は追ってくるDioとH・Pを察知。自分の役割は「予期せぬ出来事を未然に防ぐ」事と確信し、迎撃の準備に入ります。主に心構えだけですが。どうでもいいけど、「わたしが『ナプキン』をとる」ってセリフ、過去のナプキンのエピソード知らなかったり絵がなったら何の事だかわかりませんねきっと。エロいというか、下ネタにも取れそうな予感。さらにどうでもいいけど、大統領は結局ルーシーとヤれてないんだよなー。あの頃は本当、冷静じゃなかったな大統領。クールになった。どこでスーパー賢者タイムに突入したのかしら。

そして追手のDio&H・P。大統領に迫るため、車両に乗り移り相対します。映画とかだと馬から列車に乗り移るシーンなんてのは、それだけでひとつの見せ場だったりするんですがここではあっさり乗り移ってしまいました。普通なら苦労するところも、スタンド使いなら楽勝ぽい。ていうか、SBR参加者なら誰でも朝飯前かも。

待ち構える大統領。しかしその大統領は「隣の世界の大統領(ダイヤモンド大統領)」であり、遺体大統領はすぐそばの扉の影に潜んでいたのでした。ついでに言うと、DioとH・Pもダイヤモンド世界のDioとH・Pで世界自体もダイヤモンド世界でした。さらに言えば、時間軸もちょっと前の世界。ダイヤモンドDioとH・Pは潜んでいた大統領にドアアタックをされて隣の世界(遺体世界)へと飛ばされます。引き戸だったらよかったのに!
そうやって飛ばされた先が、前号の続きというわけ。このあたりから、「どっちの世界のキャラか」というのを意識しないと読むのが難しくなってきやがります。というのも、同じキャラは同じ考え方をするとはいえ持つ知識や体験に差があるので、そこのところをしっかり認識しておかないとキャラクターの行動が理解しづらくなるのですよ。ダイヤモンド界のDio&H・Pは大統領の能力を知っていたのかというと、答えは「No」。ただ、射程距離はおよそ5mと認識していたようです。


ここでダイヤモンド大統領と遺体大統領が会話を交わすのですが、これが興味深い。全ての基準は唯一無二である遺体の世界。それを受け入れているダイヤモンド大統領は、やはり通常の世界を生きる我々とは異なる価値観を持つようです。並行世界を認識し、入れ替わりすら受け入れる大統領ならではの価値観と言えましょう。大統領のスゴイところは、基準となる世界からくる大統領が大統領自身の基準ではないところですよ。何言ってるんだかよくわかんねーと思いますが、遺体の世界から来た大統領が一番偉くて本体みたいな存在になっているわけではなく、遺体の世界の大統領も捨石になりえるし、他の世界の大統領も主役になりえるわけなので、もうこれは最早一個の生命体というより、目的や概念というレベルの存在になってんじゃないでしょうか。近しいかなと思える存在は、ハルヒにおける長門(情報統合思念体)やスタートレックDS9におけるオドー(流動集合体生物)あたりなんじゃないかと思ったり。

と言いつつも、重箱の隅をつつくような事なのだけど、会話による意思疎通が必要なのは何故なんだろう。やはり推測通り、接触することで意識の共有が為されるってことでいいのかな。それだったら触れて終わりって気もするけど。読者にわかるようにしてるだけなのかもしれません。


自らを労う大統領



で、前号の続き。

大統領によって拉致されてきたダイヤモンド世界のDioとH・Pが、遺体世界でDioとH・Pの前に放り出されたところです。事態を認識しているのは、隣の世界からの帰還を果たした遺体世界のDioのみという状況。H・Pに警告として、これが危機でありその危険度を伝えますが、まあすぐに理解するのは難しいですよねー。
Dioは馬を捨て、足で列車に追いつく事をH・Pに指示します。この辺の理由は「ワザと追いつかせるため」と後で明かされますが、理由としては弱い気がします。敢えて言うなら、紙幣の機雷を自然に設置するためか。Dioともあろうお方が、土手で足を滑らせるっておかしいような気がしなくもない。。うーん。
その紙幣の機雷もよくわかりませんでした。並行世界から持ってきた物体も人物同様、お互いが接触すると破壊・消滅があるという新事実はともかく、その破壊が攻撃になるのは初耳であります。Dioは何でも知ってるなあ。こんなことできるなら、大統領も既にやってそうなものだけども。能力解明のヒントになるかもしれないから、あまりやらないのかもしれない。
ともあれ、紙幣機雷で異世界から来たDio&H・Pの脚にダメージを負わせる事に成功したDio。このために自分の紙幣とH・Pの紙幣両方をバラ撒いたのね。やるなあー。異世界Dioは列車へと急ぐDioを追い、H・Pはそのまま目前の自分と相対。思考パターンも同じなため、同時に攻撃を繰り出す事になったH・Pさん。好戦的な性格が災いしてるよー!
双方がお互いの攻撃を食らい、目を塞がれた状態のH・P。落としたスプレーを拾おうとしますが、思考パターンが同じなため手探りで探すのもそれに気づくのも同じタイミング。こういう戦いはやり難そう。ていうか、些細なことだけど、自分の能力なんだから「肉スプレー」じゃあなく、ちゃんと「クリームスターター」って言ってあげてよ! …って、ひょっとして「クリームスターター」は能力名で、あのスプレー缶は肉スプレーなのかひょっとして。というか、スプレー缶はスタンドじゃあないのか? もうよくわからん。それにしても、クリームスターターって結構融通が利かないんだなぁ。前号でも自ら解除できなかったようだし、今回の目隠しも自分では対処できないみたいだし。

そんなH・P、好戦的且つ相手の言う事を全く効かない性格が災いし、自分に対する説得も通じずついに接触。消滅が始まりますが、これをブラウン号に触れ、吸い取った肉をどうにかすることで危機回避します。えっと、ぶっちゃけ、どうやって回避したのかさっぱりわかりません。吸い取った肉で消滅側を補うかコーティングしたのでしょうか。ついでに言うなら、この時目隠しも解除されます。何をどうしたのかはわかりませんが。


何がどうしてどうなった♪

そのままスプレーをゲットし、失った右腕の治療をしつつ列車へと走るH・P。このH・Pは遺体世界のH・P。列車ではDioが待っててくれて、手を貸してくれるようです。優しいな、Dio。しかし背後からブラウン号に乗った、ダイヤモンド世界のH・Pも接近。列車内でももう一人のDioが追ってきてます。
しかしこれはDioの作戦のうちで、二人を同時にこの場所へ誘き寄せるためなのでした。

この場所は、ダイヤモンド世界のDioとH・Pが出現した扉。Dioは彼らがどこから出てきたか、よぅく視ていたのです。さすが恐竜の動体視力。大統領の能力を知るDioはすぐさま対処法も思いついたのですね。情報を持ってるってデカいなあ。ともあれD4Cの能力は、扉を開くのはD4Cのみだけど、D4Cでなくても並行世界への扉を開いた場所で同じように挟み込みさえすれば、誰でも同じように行き来できるようです。しばらくすると扉も消えるのかもしれないけど、『許可』とか要らないんですな。結構曖昧だ。

この、「挟み込む」という行為が扉になるのは、「観測できなくなる(観えなくなる)」瞬間から、何が起こっているのか分からないからなんでしょうね。曲がり角の先がいつも同じなのは確率的に可能性が濃厚なだけで、昨日と同じ光景が広がっているとは限らないのが量子力学における並行世界の考え方だから、挟み込むというのはその延長上の表現で、次元移動の扉(ゲート)として描きやすかったからだと推測してみます。それでも解り難いけどな!


最後、ようやく主人公チーム登場! Dioらと大統領の戦いを静観するジョニィとジャイロ。列車の向こうには、これまた久々のポコロコ、バーバヤーガ、東方ノリ助も。そういえばレースをまだやってるんでしたね。すっかり忘れていた事実を思い出したところで、To be continured→

レースだった事を思い出させてくれる面々

出典) 『STEEL BALL RUN』 荒木飛呂彦/ウルトラジャンプ・集英社

ブラボー…おお…ブラボー! 最初ブラボタンにしようと思ったけど、なんかやらしいからやめたんだぜ

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