第六回アニマックス大賞受賞作品『タカネの自転車』感想

| 2008.07.16 (Wed) 3:34 AM | [アニメ, [ジョジョネタ] | ←前■TOP■次→ |

アニマックス大賞『タカネの自転車』


 

 

 

 

 

 

 

第6回アニマックス大賞に輝いた「タカネの自転車」の感想です。アニマックス大賞コンテストの作品を観たのは初めてでしたが、とても素晴らしい出来映えでした。1話30分という枠に凝縮されている分、テーマもはっきりしてるし濃密になっているのかな。アニマックス大賞、スゴいっすよ。最後には審査員を務めた荒木先生のコメントにも触れてます。

<あらすじ>
高澄高嶺(11)は模試で100位以内に入れば新しい自転車を買ってもらえるはずだったが、結果は112位・・・。高嶺は母親に92位だとウソをついた上、答案用紙を破り捨てる。塾の帰り道、高嶺は妹の珠貴(7)に譲るはずの自転車を壊してしまい、珠貴を怒らせてしまった。母親にウソをついたことも責められ、高嶺は珠貴を厭わしく思う。

ある夜、飼い犬のクリスを探しに神社に向かった高嶺の前にひとりの青年が現れる。その青年はヨヨギと言い、ナント92位と書かれた高嶺の答案用紙を持っていた。ヨヨギは答案用紙と高嶺のいらないものを交換しようと要求し、高嶺はいらないものは珠貴だと返答してしまう。すると高嶺とクリスを探しに神社に現れた珠貴を、ヨヨギは発光体に変えて飲み込んでしまった!

過ちに気付いた高嶺は珠貴を取り返そうとするが、ヨヨギは自分とのレースに勝てば珠貴を返すと突きつける。壊れた自転車でレースに挑む高嶺。

高嶺はレースに勝ち、珠貴を無事取り戻すことが出来るのか!?
勤勉で優等生な兄・タカネと無邪気な妹・タマキ

受験を控えた身でありながら、家事、妹の世話とオールマイティにこなし、成績も優秀な優等生兄貴・タカネ。犬の散歩とかめんどうな事が回ってきてもなんだかんだで単語カード片手に散歩に出るいい子です。そんな彼のささやかな希望が、模試で100番以内に入ったら買ってもらえるマウンテンバイクだった。それがあったからこそ、身体に合わない古い自転車にもガマンして乗っていたのだけど、模試の結果は112番。わかります、この気持ち。見てくれている人はちゃんといるのだけど、数字という目標を掲げた以上、残酷なまでに結果は突きつけられるんですよね。何が悪かったのかと言えば、もちろん自分なのだけど、無意識的に分かっていても感情的・衝動的には、雑用で勉強に専念出来なかった事が頭を過ぎってしまう。そんなこともありますよ、人間だもの。

こぼれたウソとすれ違う思い

そしてつい、ついてしまったウソ。順位は結果のアヤ、努力は多方面に亘ってしてきたのだから、ほんの少しの差なのだからいいだろうと、92番だったと報告してしまうのです。親としても順位はただの目安であり、いつもがんばっているタカネへのご褒美として買ってあげるつもりであったし、日ごろの行いからの信用もあるので成績表を見せなくてもOKな雰囲気だったのですが、それを許せなかったのが、妹の珠貴。珠貴は兄への誕生日プレゼントを買うためにショッピングセンターへ赴いた折に、タカネの友人から100番以内に入れなかった事をすでに聞いていたのです。それを聞いたときは、兄が楽しみにしていた自転車が買ってもらえなくなった事を心配したのだけど、帰ったらウソをついているのを聞いてしまう。そんで、まだちびっこな妹くんは責めてしまうわけですよ。それはもうまっすぐに。悪意なんかはまったくなく、ただ、憧れていた兄がウソをついたのがショックで、それが許せなかっただけ。ほんとは慰めるつもりだったのに(慰めるとかいっても邪推すんなよww)、ウソをついている兄が悲しかった。だからこそダイレクトに、タカネの耳に突き刺さる。素直さは、時に残酷だったりするのです。

ウソなんてついてほしくなかった

―ウソツキ――。一番痛いところを突かれて、なぜタマキが知っているのかなど冷静な思考が出来てないタカネくん。そもそも一体誰のせいでこうなったと思ってる、そんな風に思ったかもしれません。部屋に戻り、口を突いて出た愚痴が


「珠貴のヤツ、ホント要らねえ!あんなの!」


衝動的に出たその言葉を、闇から聞いていたものが入るとも知らずに。

『神社』という、現実とファンタジーの境界

一時的にギクシャクしたものの、翌朝には普段どおりに戻ったタカネとタマキ。普段どおりならこのまま収まっていくのでしょう。しかしこのあたりからファンタジーが溶け込んできます。
飼い犬クリスの散歩中、突如駆け出して行ってしまうクリス。行った先は小高い丘にある代々木稲荷神社。この場所は、タマキが幼い頃に恐ろしい体験をして以来トラウマになっている場所でした。まあ、この体験もヨヨギの手によるものなんですけども。
クリスの事は気になるけど、神社というフィールドが持つ神秘性と畏怖、過去の体験から踵を返してしまうタマキ。神社って独特の雰囲気で、なんだか怖い場所ですよね。お寺やお墓と違ってお化けとかと因果関係はないのに、なんか妙な空間を作り出してると思います。奥行きがあるっていうのかな。寺社と違い、神社は鎮守の森なんかがセットになってるので、そう感じるのかも。かなり身近なスピリチュアルスポットですよね。
駆け足で戻った家ではタカネが食事の支度をしていたのだけど、タカネは多少グチをこぼしながらもクリスを探しに行くのです。タマキには先にごはんを食べるように書きおきをして。「タカ兄…」という呟きが印象的。

ずれていた思いと契約

クリスを探しに神社の境内に足を踏み入れたタカネは、日常とは異なる、いなりや空間の中でキツネ目の少年"ヨヨギ"と遭遇。ヨヨギはタカネが破り捨てた成績表を92番に修正してこう囁くのです。


「それは新しい自転車の引換券~要らないものと交換ならいいよ?例えば妹とかさ。」
「お寄こしよ。あんなのいない方がいいんだろう?」



タマキの事を要らないと言ったのは事実だけど、タカネは心からそう思っていたわけじゃない。でも、成績表も欲しい。自転車が欲しいんじゃなく、ウソをついた後ろめたさを解消したいという思いがあったのではないかな。そこでタカネは、「(妹を)連れてこれるならいいよ」と提案。タマキは神社に絶対これやしないから、という目論見があったからこその言葉でした。


「じゃあ、いいんだね?」


ヨヨギの視線の先には、神社に来れないはずのタマキの姿が。


「タカ兄ぃ…」


ここ、ココですよ、グッとくるのは。怖くて入れない場所なのに、兄を心配して追ってきたんですよ。クリスの時は入れなかったのに、兄を追って、トラウマのある超怖い場所に、勇気を振り絞って小学一年生の女の子が、(これはオチに繋がるんですが)優しいお兄ちゃんに一言伝えるために、追いかけて来てたんです。健気過ぎて泣けた。

タカネもびっくりですよ。自分が思っていた以上に慕われていた事を認識したんじゃないでしょうか。
でもそんな余裕もないまま、ヨヨギはタマキを吸い込んでしまうのです。あっけにとられているタカネを尻目に、タマキに関係する品物もどんどん吸い込んでいくヨヨギ。それを止めるために手にかけた引き出しからは、タマキがタカネのために買った誕生日プレゼントが。タカネは基本的に賢くていい子ですから、もう気づくわけです。ホントに大切なものは何だったか。


「成績表は返す!新しい自転車なんか要らないよ!だから今すぐ、タマキを返せ!」


返品は認めてない、と突っぱねるヨヨギ。タマキはモノじゃない!と意気込むタカネ。しかし、「忘れなさんなよ?アンタが先にモノみたいに扱ったんだぜ?」というヨヨギの言葉にたじろいでしまうタカネ。それでも懇願するタカネに対し、かけっくらべで決着を着けることに。

自転車に思いを乗せて

このあたりの展開は、ホラーファンタジーからややマイルドになった感が否めませんが、自転車というガジェットを使ってくるのはいいアイデアかもしれません。というか、ここで使わないとタイトルにも冠する自転車の印象が薄くなりますしね。ヨヨギはキツネの本性を現し、タカネは自転車で。ついでにちょこちょこ絡ませられていたタヌキもここで出てきます。このタヌキどもはオチに直結するんですが、なぜ出てきたのかはいまひとつ不明。タカネにケガをさせてしまった借りがあるから助けてくれたのだろうけど、それだけではどうにも弱く、ご都合主義ぽいとされても仕方ないかも。キツネとタヌキの関係についてもう少し何かあれば良かったかもだけど、キツネだからタヌキという感じなんだろうな。尺もあるし、どうでもいいといえばどうでもいい事なんでまあいいか。

デッドヒートはメルヘンでファンタジーな展開で決着。銀河鉄道と化した自転車でキツネのしっぽを捕らえた瞬間、取り込まれていたものが宙に弾ける。元に戻ったタマキの口から出た言葉は、謝罪の言葉。


「タカ兄ぃ… ごめんなさい…」


言う事聞かなかったり、ワガママ言って困らせたり、つい傷つけてしまったり。それでも優しくいてくれた兄に対して、恐ろしい場所に入り込んでまで伝えたかった言葉は、謝罪の言葉。いくつものありがとうの上にある「ごめんなさい」はマジ泣けた。ありがち?バッキャロウ、王道だから泣けるんだよ!素直さは時に残酷だけど、やっぱり美徳です。

「謝んなきゃいけないのは俺の方だよ」

素直な気持ちには素直な心で!
エンディング、最後の画は、新品のマウンテンバイクと、お下がりの自転車。どちらもキラキラ輝いててとても良い締めでした。


さすがはアニマックス大賞、気にすれば粗もありますがテーマはしっかり、かつスッキリとまとまってて見易かったです。展開がいくらか読めるせいかもしれませんが、短いなかでもみせるところはじっくりと魅せてって感じで、メリハリが効いていたと思います。そういう意味でも、しっかりしてた。兄弟がいる人は特に感じるような、兄という立場からの気持ち、妹という立場からの気持ちそれぞれが描かれてて、そこがグッドだったと思います。
あと、堅実さに輪をかけたのが声優陣。坂本真綾さんや折笠富美子さんの心情たっぷりの演技が素晴らしい。中でも良かったのはヨヨギ役の石田彰さん。ハマリ役というのもあるだろうけど、さすがの一言。古風かつ流暢な語り口はすごくマッチしてました。

それにしてもアレだ、珠貴可カワイ過ぎね?室内で浮き輪とか、追いかけてくるとことか、いつも勉強教えてくれてありがとうとか、最後のごめんなさいとか、萌死ぬかと思った。いやべつにロリコンがどうとかじゃなくって、愛でる気持ち?これをロリコンとか言われたら、父性とか慈愛といった観念が否定される気がするよ。どうでもいいけど、キョンの妹を思い出した。キョン妹はあれで小学五年生(六年)なんだよな。おいおい、タカネと同い年かよ。ありえねー。ハサミ貸してーとか言ってる場合じゃないよ。



メイキング・オブ タカネの自転車 『タカネの自転車』/タカマガハヤト

続けてメイキングが放送。これもまた面白くて、業界の事がほんのりわかった気がします。

アニマックス大賞の面白いところは、大賞を取れば映像化というのももちろんなんですが、アニメ化に際しての脚本も担当するというところですね。小説と脚本では勝手が違うだろうし、本当にいろいろな体験ができるんだなあと。受賞者のタカマガさんはシナリオの勉強も1年半ほどしてたそうな。脚本は作る人、実写なら演じる人、アニメなら絵コンテ描く人や演出、原画マンに伝わらないとダメだから、単純に物語を書くのとは違うのでしょう。

このアニマックス大賞の応募総数は3056通。そこから6作品に厳選。審査員は小説家の夢枕獏先生、漫画家の荒木飛呂彦先生、脚本家の金子ありささんなど、一線級で活躍されているメンバー。我らが荒木先生もコメントを残されてました。相変わらず若々しい荒木先生をざらっと紹介。




怪奇ムードとかももっと漂えば、ファンタジー作品としての完成度はそんなに悪くはないと思う。

怪奇ムードが前面に出てくるのはこの作風の場合どうかと思うけど、身近なところに怪奇の入り口というかファンタジーへの扉があるというのはわかります。これをもっと恐ろしくする場合は、ヨヨギの妥協を取っ払えばいいんじゃないかな。謝ったから譲歩してかけっこで勝負とかじゃなく、さらに奪おうとしてくるヨヨギを機転や工夫で打破して取り返せば、ぐぐっとシリアス感が増すと思います。この物語としては、『教訓』という意味があるのだろうから、あまりピリピリしてはいけないのだろうけどね。素直さの美徳も伝えたいもののひとつだから、ヨヨギに謝るのは外せないという見方もあるでしょう。






ぼくにも妹がいて、うちの親は妹ばかり贔屓してる感じがあるんですね。そういうところが兄として嫉妬感があったりして、その辺の感じがすごく良くて、大賞に僕は推しました。

ま、また悪魔のシスターズネタですか(笑)。荒木先生の場合、親の贔屓プラス双子シスターズの結託した陰謀もあるから、まさに詰んでます(笑)。でも、仲、良いんですよね!仲良きことは美しき哉。



ともあれ、こういった登竜門というか、業界に食い込んでいけるイベントは貴重だし重要だと思います。過去のアニマックス大賞も2本ほど放送されていたのだけど、どれもこれも面白くてレベル高かったです。どのくらいかというと、こんだけ推したタカネの自転車よりもさらにちょっと面白い感じ。「ゆめだまや奇談」はタカネでもの足りなかった(ご都合部分とか)ところがなくて、完成度で上回っていたように思うし、「リリとカエルと(弟)」はテーマが実にしっかりしていて、音や歌で冒険していたのだけどブレがなく感じました。

また、アニマックス大賞作品のアニメ化を請け負うアニメ制作会社にも注目したい。第一回と四回は東映アニメーション、二回はサンライズ、三回は東京ムービー、五回はProduction I.G、そして第六回のタカネはA-1 Pictures と、どれも実績のある制作会社。今回のA-1 Picturesは「おおきく振りかぶって」は自社単独名義での初請負なので大抜擢だったのかもしれないけど、もう既に評判の制作会社。鉄腕バーディー DECODEの出来は素晴らしいし、個人的にはかんなぎは超期待してます(Ordetのヤマカンの存在が大きいですがw)。ともあれ、アニマックス大賞を請け負った制作会社にも要注目って事で。

『タカネの自転車』
原作・脚本
タカマガハヤト
監督・絵コンテ・演出
池田成
キャラクターデザイン・作画監督
神村幸子
美術監督
工藤ただし
音響監督
小林克良
CV
[高嶺] 坂本真綾
[珠貴] 折笠富美子
[ヨヨギ] 石田彰
[蛍子] 佐久間レイ
[篤史] 佐藤ゆうこ
[警察官] 笹田貴之
アニメーション制作
A-1Pictures
製作
アニマックス
アニマックス大賞
http://www.animax.co.jp/award08/what.php
◆関連リンク
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ブラボー…おお…ブラボー! 最初ブラボタンにしようと思ったけど、なんかやらしいからやめたんだぜ

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