[墓場鬼太郎] 第11話「アホな男」

| 2008.04. 2 (Wed) 5:33 AM | [アニメ, [墓場鬼太郎] | ←前■TOP■次→ |

第11話 『アホな男』

「こいつ!僕の気高い金もうけにケチをつける気だな!」(鬼太郎)


 

 

 

 

古本で見つけた墓場鬼太郎の原作文庫を途中まで読みました。そこから判明した事は、このアニメが恐ろしいまでの原作再現度を誇っているという事。若干のアレンジはありますが、このカオスさをよくもアニメーションにしたものです。さらに音楽、絵柄の要素が合わさって素晴らしい作品に昇華してると思います。フジのアニメはなかなか高品質なのだけど、その中で稀に傑作が出るよなー。蟲師も良かったですしね。フジは芸能人とか俳優をキャストに置くにしても巧い気がしますね。墓場もそうでしたが、蟲師やもやしもんも巧かった覚えがあります。

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第11話 『アホな男』


 

いよいよ今回で墓場鬼太郎もフィナーレを迎えます。11話という短い話数でしたが、その内容はかなりの濃度だったのではないでしょうか。あって無いような内容だったり、さっぱりまとまってもいないように感じるのは錯覚ですw。

その中でこのファイナルエピソード「アホな男」は稀に見るまとまりを見せていました。張られた伏線を普通に回収し、伝えたいメッセージを盛り込んで、オチを着ける。普通の事なのに、なんだろうこの安心感。キッチリまとめてきたな!と感じてしまうあたり、僕はもはや術中にどっぷりなのかもしれません。


 
あの世保険と毛生え薬

鬼太郎が考案したニュービジネス、それがあの世保険。カネを払う事によって来世での幸福を約束するというアイディアは、稀代の詐欺師か大宗教家レベルです。要するに免罪符に近しい代物。しかし、リアル志向のねずみ男には「冗談じゃあない、ありもしない幸福なんかにビタ一文払えるかよ!」と一蹴されてしまいます。

新しい概念を商品として売り出そうとする鬼太郎に対し、ねずみ男の目指すものは具体的なもの、それも禿げ頭救済のための毛生え薬の発明。髪の毛への需要は世界レベルですよ。もし成功したならば、ノーベル賞ものの勲功です。全世界の禿げ頭から神として崇められる日も近いとはねずみ男の談ですが、実績的には誇大妄想ではありません。髪の神になれますよ。

そんなねずみ男の毛生え薬は、ぶっ飛んだ効果を含んでいました。それはなんと、不老不死効果。ねずみ男は自身のヒゲを薬に混入していましたが、これがポイントだったらしいのです。なんでも、原始的な生物に不死のものがあるように、ねずみ男のヒゲは原始的な組成であったため、不死の効果があったというのです。これはひょっとして第一話への引っかけなんでしょうか。ほらあの、幽霊族の血を輸血したら不老不死の幽霊になったあれ。状況的には一緒なのに、あの時は医学的大発見にはならなかったなー。やっぱり、若返らなかったのがダメなんでしょうか。色彩豊かな歯も生えたしなーねずみのヒゲは。何にしても、ねずみ男スゲエって事で。 
 
不老不死の秘薬原料

あの世保険の落とし穴

鬼太郎:「景気悪そうな家だな…いい感じ!」

違和感を感じ取れたでしょうか。それが何かは鬼太郎の勧誘口上を聞けばより分かると思います。

鬼太郎:「貴方様は現在幸福でいらっしゃいますか?満ち足りた生活を送ってますか?」
鬼太郎:「やっぱり…そうした現世の不幸せを来世で埋め合わせるのがあの世保険でございます。」
鬼太郎:「現世のわずかな賭け金で、来世での幸せを保証します。」


そうなんです、鬼太郎はあの世保険のメインターゲットに貧しい層を選んでいるのです。確かに現在に不満がある人に対して需要がありそうですが、これでは回収率が非常に悪くなってしまいます。手広くやるならば回収も出来るでしょうが、従業員は鬼太郎一人。これではなかなか難しいものがあります。そもそもあの世保険の眼目「来世での幸せ」は万人が求めるもの。いやむしろ、現在絶頂にいる層こそ、その保証を求めるものなのではないでしょうか。鬼太郎はマーケティングをした方がいいと思います。

ともあれ、あの世保険の効果は死んでからわかることなので、誰にも確認する術がないというのが一番のメリットですね。詐欺ともいいますが。が、鬼太郎の場合、一概に詐欺にならない可能性があるのでアリかもしれませんね。信じる人がいればですけど。

あ、鬼太郎がやった行為ですごく効果的だなあと思ったのが「幸せ計」。数値化すると分かりやすいですよね。不安も煽りやすいというものです。幸せなんてものは、主観の産物なのですけどもね。自分で幸せだと思ってれば幸せなんだし。

不老不死のキーパーソン、ねずみ男のピンチ

不老不死のカギを握る人物として多勢力から狙われることになったねずみ男。間の悪いことに、一番たちの悪い勢力と鉢合わせしてしまいまいた。ねずみ男、ピンチ!しかしそこはねずみ男、ねずみ男は強いのです。歩く生物兵器、静かなる暗殺者、無症候性キャリア、本来ならば街をのこのこ歩いていい存在ではないのです。皮膚の粉に触れればかぶれ、放屁ガスは花を紫色にし心臓を一時停止させるほどで常人が吸えば即死の効果があるのです。そんな事も知らずにならず者どもは自分たちもろとも金庫に閉じこめ髭を奪おうとしました。何という愚かな行為。墓穴を掘るとは、まさにこの事です。ねずみ男は落ち着いたしぐさで裾を払い、必殺の放屁攻撃!
 
 
国際条約に抵触する可能性アリ


そこは密室、効果は抜群、阿鼻叫喚の地獄絵図。ガス室とさして変わらない世界がいきなり展開されたのです。おお、恐ろしい (((( ;゚Д゚))))。


一方的過ぎる虐殺


かろうじて逃げたヤツにもナチスガス殺法ですよ。ねずみ男にちょっかいを出したばかりに、落葉組はこれにて壊滅的打撃を受けたのでした。

起き上がりに重ねるとハメ

消えたファザコン設定

ねずみ男:「目玉親父、心配してたよ」
鬼太郎:「要らぬお世話ー」


墓場鬼太郎にはそんなもの存在しないのかもしれないけど、目玉親父と鬼太郎の関係がゲゲゲとは大きく違うのが気になりました。ちょっと反抗したい年頃なんでしょうか。鬼太郎はいつでも誰に対しても反抗的ですけど!

怪奇オリンピック開催

表の世界では東京オリンピックが開催されようとする中、裏では怪奇オリンピックの開催が迫っていたのでした。ご時世を鑑みれば、東京オリンピックというアジア初、日本初、そして第二次世界大戦から復興を遂げた事を誇示する国家的世界的イベント、その言葉を聞いただけで胸が踊り鼻息荒くなるのも頷けることでしょう。そんなオリンピックの、裏ヴァージョンとも言える怪奇オリンピックのチケットがもらえるとなれば、水木(さげる)さんの興奮もわかるというもの。試しに書いてあった通りにチケットを丸めて飲んで風呂に入ってもおかしくないのです。なのです。

怪奇オリンピックはあの世で行われるので、行くにはぶっちゃけた話、死なないと行けないんですけどもね。

竜宮レナ?編集

二つある霊魂と入れ替わってしまった水木さん。自由を得て喜ぶ裏の水木さんの元に訪れたのは編集さんでした。十万円も前借りしてった(前借りしたのはファースト水木)のに何にも原稿書いてない作家に怒り狂う編集さん。どのくらい怒っていたかと言うと、ナタを持参してきて、原稿がまだと分かったとたん、顔を真赤にして「十万円分、ちぎっていくでぇ~!」とか口走ったほどです。これもナタ持って振り回してるんですけど、問題にならないんでしょうか。


アニメの影響力が偉大過ぎるから自重するんだよ!


さりげなく、2番目水木さんの「前の水木は何をやってたんだ!」というセリフはごもっともだと思う。実際やってなかったのは彼なんだ。

現世とあの世

自分たちは死んでしまったという事を知った水木さんたちなのでしたが、

落葉:「不思議だぁーちっともハラがすかね」
院長:「何も食べなくてもいいんですね」
水木:「働く必要もないのか」


と、諦めの末に見えてきたあの世の素晴らしさに気づき出しました。


水木:「ひたすら働いて金を稼いできましたが」
落葉:「権力を得るため一生を費やし、長生きしたくて神経をすり減らしたが」
院長:「医者としての名誉を追い求める必要も」


目玉親父:「そういった慾に縛られているとのんびり楽しめないものです」
目玉親父:「あの世もこの世も関係ない」
目玉親父:「その気になれば、どこだって生きがいは見つけられますよ」



穏やかなまなざし


うおおおお、これこそが根幹テーマか。死線から生きて戻った水木さんが日本に戻って見た人々の姿の代弁でしょうか。深い、深いですぜ。死んでるのに生きがいとはおかしな話だけど、生死の概念に縛られてせかせかしている様は滑稽なのかもしれませんね。
でも、生きている限り、なかなかそのような境地には辿りつけないのです。辿りつく事を、悟り開くと言うのでしょう。


水木2:「俺はなんて取り返しのつかない事をしてしまったんだー!」

現世に出てしまったセカンド水木さんの言葉が重い。彼は死ぬまで働き続けなくてはいけないのです。地獄とは何ぞや。

死ぬまで働くのよ?

これはちょっとしたスペクタクルですよ?




目玉親父:「千年に一歩歩く鳥が!」
水木:「歩いた!」
院長:「素晴らしい!」
落葉:「お見事!」


一同、千年に一度の衝撃的瞬間に立ち会えたことに大盛り上がりの大興奮。なんて楽しそうなんだ!

せめて、人間らしく

鬼太郎:「あー、人間世界で生きていくのも、楽じゃねえなあー」
ねずみ男:「ちげぇねえ」


ねずみ男:「でも、退屈もしねえよ?」
鬼太郎:「ヒッヒッヒッヒッヒッ」



現世は刺激、あの世は癒し。両者はそんな関係にあり、それぞれに良さがあるのかもしれません。どこだって生きがいは見つけられるんですよきっと。

改めて考えると、鬼太郎のあの世保険は間違いはないのかもしれませんね。現世の苦行から開放されれば、あの世という癒しの世界が待っている。死んでみて、「騙された!」と思う人はいないのかもしれませんね。まあ、万人に訪れる事なので、鬼太郎にお金を払う必要はまったくないわけで、その点において詐欺なのかもしれませんが。でも、事前に話を聞くことで、安心感は得られるのか。それにより、現世での生活が充実するかもしれないし。何でも考えようですね(笑)


貴方のハートには何が残りましたか?

『墓場鬼太郎 第11話 アホな男』
原作
水木しげる
シリーズディレクター
地岡公俊
シリーズ構成
成田良美
脚本
成田良美
キャラクターデザイン・総作画監督
山室直儀
演出
地岡公俊
作画監督
袴田裕二
窪秀巳
美術監督
くらはしたかし
音楽
和田 薫
CV
[鬼太郎] 野沢雅子
[目玉親父] 田の中勇
[ねずみ男] 大塚周夫
[落葉] 矢田耕司
[水木] 小杉十朗太
[地底の水木] 大場真人
[水木の妻] 中友子
[水木の子供] 安田早希
アニメーション制作
東映アニメーション
製作
水木プロダクション・墓場鬼太郎製作委員会
公式サイト
墓場鬼太郎

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