2007UJ07月号SBR感想 『#27 鉄球VS鉄球』

| 2007.06.27 (Wed) 12:35 PM | [SBR感想, [荒木IZM] | ←前■TOP■次→ |

 氷点下の世界、マキナック海峡…
 最も恐ろしい刺客がジャイロとジョニィに襲いかかる!!

 

前号まで
夫を救うため、ホット・パンツと共謀し、大統領の遺体奪回に成功したルーシー。だが、その過程で大統領夫人が死亡。
混乱を避けるため、ホット・パンツの能力で変装したルーシーが身代わりを務めるハメに…。その頃、ジャイロたちは――

まだ続いていました6thSTAGE。あらすじを読むと、どうやら本エピソードは政府公邸の攻防と平行しての出来事のようです。舞台は五大湖北岸、マイナス35度の氷点下の世界。

そこに到達していたのはレース参加者ではなく、大統領の追っ手でした。しかも今度はタッグチームです。ソリに乗った黒ずくめのシルクハットと、頭髪やモミアゲ、あごひげに至るまでメッシュ状の男。しかもこのメッシュ男は重要なキーパーソンらしく、その男の過去から物語は始まります。まあ、SBRファンならば、こんな奇抜なヘヤーをしているキャラは特定の国の人ぽいとピンとくると思いますが、まさしくその通り、その男ウェカピポはジャイロの祖国『ネアポリス王国』出身でした。

 

自由な髪型。手入れは大変。

ウェカピポはネアポリス王国の王族護衛官。そしてウェカピポには妹(17)がおり、その妹の不幸から過去は語られます。

そのあたりを要約すると、仕事の同僚にいいとこのボンボンがいて、その同僚となら妹(17)も幸せになれるだろうと縁談を進めたのはいいものの、いかにもぼっちゃんというかSッ気があるというかDVというか色々とダメな人でして、猛烈に後悔した彼は職を失う覚悟をして教会や法王に手を回して婚姻無効とすべく動いた兄貴。

財務官僚のボンボン。

 

それに対しポンポンが怒ったの何の。剣で殴られ、耳元で「おまえの妹はなあ、殴りながらヤリまくるのがいい女だったんだよ、じゃなきゃあちっとも気持ち良くねーし、つまんねぇ女だった…」まで言われても怒りを堪え平謝りするウェカピポでしたが、それでもボンボンの気は収まらない様子で遂には決闘することになりました。

決闘方法は祖先から受け継ぐ『鉄球』!それならなんで剣を持ってきたのか甚だ疑問ですが(決闘前に双方とも剣を投げ捨てた)、「それが流儀ィィッ!」らしいので鉄球で決闘です。双方とも同型の鉄球を投擲。王族護衛官専用の鉄球なのか、ジャイロのものがツェペリ家専用なのかはわかりませんが、表面に小さな丸い突起が複数付いた鉄球を使う両者。空中で激しく回転しながらぶつかり合う二つの鉄球。すると表面の丸い突起が小さな鉄球となって分離!両方とも同じ動きでしたが、ウェカピポに飛来したものはかろうじて額をかすめ、ボンボンは右眼に直撃して脳漿をブチ撒ける事になったのでした。ちなみにこの決闘にはボンボンが連れて来た「見届け人」がいまして、これにはてっきりボンボンはボンボンらしく絶対安全な勝利を用意したのかと思いましたが、彼らは勝負には一切手を出してこず、これは意外な展開でした。ボンボンはフツーに決闘してフツーに負けました。

なんとか勝利をおさめたウェカピポ。しかし、先ほどの見届け人が周りを取り囲みしかも鉄球攻撃。しかもその相手はモミアゲだけで判別できる、あの方です。決闘は正式なものではあったのですが、やはり相手の背景を考えると無罪放免にするわけにもいかず、結局消される筋書きになっていたのでした。

…あれ?それじゃボンボン無駄死に?どうも父親が重要であったらしく息子は死んでも死ななくてもどっちでも構わなかったみたいで、色んな意味でダメな人だったんだなあと思いました。

で、結局消されるウェカピポでしたが、グレゴリオの手心で「死んだこと」になり、彼は国外追放になったのでした。それでも最初の約束と違う事やボンボンのせいで眼が見えなくなった妹の身を案じながら…。

そして大統領と取引。「市民権」と「永住権」、重要職の「地位」と引き換えにジャイロとジョニィを追う刺客となったのでした。大統領は一族の保護も約束しようと言いますが、ウェカピポには最早家族はいませんでした。祖国の妹も、昨年病死したとのこと。この男の心中は、裏切られた祖国への恨みと自分自身への許せなさでいっぱいなんじゃあないでしょうか。こいつは強敵になりそうだ…!

余談ですが、ウェカピポとシルクハットの男マジェント・マジェント。この二人の名はSOUL'dOUTの曲から来てるようです。こないだカラオケに行って「VOODOO KINGDOM」を歌おうと曲探したらウェカピポとかあってビックリした。え、「VOODOO KINGDOM」なんて歌えるのかって?うたえねーですよ!雰囲気ですよ!ノリですよ!
で、更に余談ですが、曲を聴いてウェカピポの歌詞を読んだんですけど、この内容がすごくキャラに似てるんですよね。愛を失って彷徨う感じとか、何が真実かわからなくなっている様子とか、ウェカピポの心情に被っていると思いました。特に、「網目状にひびが入るような」とかね!

 

と、ウェカピポのバックボーンはこんな感じです。思いもかけず長くなってしまいましたが、要するにウェカピポは鉄球使い。マジェント・マジェントの能力は不明ですが、即席タッグのようで息が合うかは微妙なところ。ウェカピポのキャラもありましょうが、パートナーというものはすべからく調和が必要です。ボケたらツッコむ、新作ギャグを言ったら乗ってやる。「バンド組む?」とまで言ってホンモノです。


マジェント・マジェント 氷点下のマキナック海峡にて。『ヒマラヤ雪男の涙』

こんな相方はいやだ!

 

長続きするユニットの例。

 

ウェカピポは鉄球の技術を習得している上にツェペリ家の黄金長方形の秘密を知っています。その上でツェペリ家の鉄球に敬意を払っており、慢心はありません。鉄球の秘密を知っているという、ただでさえ厄介な敵なのに、隙もないというんじゃ、これは如何にジャイロ&ジョニィといえどピンチです。もしジャイロとジョニィに付け入る隙があるならば、ここまでのレースで培った、息の合ったチームプレイしかないでしょう!

『信頼』が何よりも重要なのだ!

 

一方、そのターゲットたち。凍った湖畔でどのルートを通るか思案中です。ここの見開きの構図はしばらく見入ってしまいましたよ。逆さにしただけっぽいけど、なかなかない構図で面白い。

彼らは氷が薄いので渡るかどうかを躊躇してるのですが、そうも言ってられません。後方からポコロコが接近。しかも、ノリスケとバーバ・ヤーガを引き連れて。レース中の競り合いというよりはどうも共闘しているようで、ポコロコと共に氷を渡る決断のようです。その迷いのない行動を見て、ジャイロはやつらが氷の下に木片を埋めた「原住民のルート」を見つけたのではないかと推察します。かく言うジャイロもそれを探すために鉄球で索敵していたのでした。まあ、ポコロコは見つけたわけではなく、自分を信じて突っ込んでいっただけだと思いますが。 

実質の優勝候補であるポコロコに先着されるわけにはいかないジャイロ。同じく氷を渡るルートを選択します。ここで1位を取らなくては自力優勝が薄くなるから。

確かにジャイロが言うように2位のホット・パンツの目的がレースではなく、4位のDioが回復中。ポコロコは現在1位で警戒しなくてはいけないのは尤もなんですが、3位の人を忘れちゃいけないんじゃないでしょかね。1着取ってないのにジャイロより上位ポイントの人がいるでしょう。ほら、貴方の隣にいるジョニィ・ジョースター。今までなんだかんだ言いながら先着する事3回。更に言うなら、前回裏切られそうになったと思うんですけど。そういったどんでん返しが最後に見たいような、見たくないような。。。ないと思うけど、あったら面白そうですw。

 

氷上を行く決断をした二人。小狼を置き去りにする描写は、「情けはここに置いていくぜッ!」という暗喩でしょうか。駆け出したジャイロとジョニィですが、ポコロコたちのさらに後方から迫る影が2つ。

ウェカピポとマジェント・マジェントの追っ手の二人です。ジャイロはウェカピポを見て「どこかで会ったような」とか言ってますが、あんな特徴的な髪型忘れるなんて、ネアポリス王国はどんだけ髪型に自由なんでしょうかね。ジャイロが気付いたのはウェカピポが鉄球を投げてからでした。遅ッ!

唸りを上げて二人に襲い来る鉄球ゥ!これは怖い。予想外の武器、という事もあったでしょうが、やはり「鉄球の効果」を知っている者たちが故の恐ろしさや驚愕が迫力として伝わってきて良いコマです。

自らも鉄球を投擲し、空中で相殺するジャイロ。そこで相手が誰なのかを思い出し、第二波『衛星』に備え警戒を促します。二人を掠める『衛星』ッ!そして落馬した二人の身体は半身が消えた状態にー?!

ジャイロの落ち着きぶりを見ると、これはウェカピポの鉄球の効果なのかッ?!それとももう一人の男、マジェント・マジェントの能力?黄金長方形によるパワーの、さらに上を行くと公言するウェカピポのその真髄とはッ?!大ピンチの状態で、次号へToBeContinued…!

 

 

いやー熱い展開です、鉄球VS鉄球ですよ。ここまでのストーリーで、鉄球の「何でもアリ」さ加減には散々語られてきたわけですから、それが敵の使う能力となれば、それはそれは脅威ですよ。しかも、うまい具合にツェペリの鉄球とは異なる技術にする事で、脅威はそのままに、プラス未知の部分をも演出してます。さすがですね。

加えて、回想シーンの使い方が絶妙です。ウェカピポの背景を語る上でも必要だったと思いますが、事前に鉄球での決闘シーンを描写する事で、実際に相対した際の展開をスピーディーなものにしたと思います。普通の少年マンガなら、敵の自己紹介から技の内容まで、相対してからウダウダやってますよ。そこを、布石の部分は全て回想シーンに任せ、いきなり襲い掛かる場面でも読者を置いてけぼりにせず、且つ物語上でのリアリティや緊迫感を損なわない、見事な描き方。コロンボ方式ってやつですかね。まあ、「うお、相手が鉄球使ってきた!」っていう驚きを読者が持てない面もありますが、そこはマンガ内のキャラクターが醸す緊迫感でカバーしていると言えるでしょう。うーん、こういう流れ好きです。傍観者の立場なのだけど、感情移入が出来ますね。何のマンガとは言いませんが、「喋っている間になんかしろよ」とか、そういう考えを抱かずに済みます。

そしてウェカピポ。彼はジャイロの父・グレゴリオによって生かされ、その彼がジャイロの前に立ち塞がる。ウェカピポから見れば、裏切られた祖国のイメージとしてグレゴリオが重なり、その息子が今標的として前に居る。ジャイロといえば、(ジャイロは知らないのだけど)父グレゴリオに反目した考えを持ち、その行動としてSBRレースに参加した身。そのレース中に、父が生かしたウェカピポが敵の刺客として立ち塞がるという奇妙な因果関係。その影にグレゴリオあり。どちらも乗り越えねばならない対象となりそうです。

出典) 『STEEL BALL RUN』 荒木飛呂彦/ウルトラジャンプ・集英社

ブラボー…おお…ブラボー! 最初ブラボタンにしようと思ったけど、なんかやらしいからやめたんだぜ

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